2021.11.27

YANG XIAOZHEさん(D3、JSPS DC2)が第一著者の「4H-SiC ウエハに対する高能率スラリーレス超音波援用電気化学機械研磨法」に関する論文がCeramics International誌に掲載されました。

 本論文では単結晶SiC材をはじめとする難加工性の高機能半導体材料をターゲットとし、ダメージの無い高精度な表面を、高能率かつ低コストに得るために、超音波援用電気化学機械研磨法(Ultrasonic Assisted Electrochemical Mechanical Polishing: UAECMP)を提案しています。UAECMPにおいては、超音波援用した陽極酸化によりSiC表面を高能率に酸化し、母材よりも軟質な固定砥粒を用いた超音波振動援用機械研磨で酸化層のみを除去することで、母材の表面にスクラッチや加工変質層を形成することなく原子オーダで平滑な研磨仕上げが可能となります。
 また、本論文では4H-SiC(0001)表面に対するUAECMPの研磨効果と研磨メカニズムを実験的・理論的に評価・分析しました。4H–SiC(0001)の研磨において、UAECMPは14.54 μm/hという極めて高い材料除去率(MRR)を得ました。この値は、通常の電気化学機械研磨(ECMP)に対しては4.5倍、機械研磨に対しては290倍大きいものです。さらに、超音波振動の印加によるSiC表面への局所的なひずみ場の形成、および、研磨領域と電解液の温度の上昇が陽極酸化を促進することを明らかにしました。超音波振動の振幅の増加とともに酸化の促進効果は大きくなりましたが、超音波振動の振幅の増加に伴い、砥石とSiC表面との衝撃により研磨痕が深くなり、残留酸化物が増加するため、表面粗さが増大しました。これらの結果を踏まえ、UAECMPによる粗研磨とECMPによる仕上げ研磨を組み合わせた高効率かつ高品質なSiCウエハの研磨プロセスを提案しました。提案した研磨プロセスにより、既存のSiCウエハ製造プロセスを簡素化することが期待できます。
 
X. Yang, Xu Yang, H. Gu, K. Kawai, K. Arima, K. Yamamura
Efficient and slurryless ultrasonic vibration assisted electrochemical mechanical polishing for 4H–SiC wafers
Ceramics International 48 (2022) 7570–7583.

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S027288422103724X?via%3Dihub