2023.06.06

楊旭君(博士後期課程修了生)が第一著者の「4インチ4H-SiC(0001)および(000-1)面のスラリーレス電気化学機械研磨」に関する国際共著論文がPrecision Engineering誌に掲載されました。

 単結晶SiC基板は脱炭素社会実現の切り札となる省電力高性能パワーデバイス用材料として期待されています。しかしながら高硬度かつ化学的に不活性な難加工材料であるため、高能率かつ低コストな加工法が求められています。我々は、現状の化学機械研磨(CMP)で用いられている高価で環境負荷が大きなスラリーを用いることなく、陽極酸化による表面改質と固定砥粒定盤による改質膜の除去を複合したスラリーレス電気化学機械研磨法を提案しています。 
 本論文では、ダイヤ砥粒を用いた高速粗研磨(第1ステップ)とセリア砥粒を用いた仕上げ研磨(第2ステップ)を組み合わせた独自の2ステップ研磨プロセスを4インチサイズのas-slice  SiCウエハのSi面およびC面に適用して研磨特性を評価した結果に関して述べています。第1ステップでは電流密度の増加とともに研磨レートは増加し、Si面、C面ともに最大で40 μm/h以上の高研磨レートを得ました。第2ステップではスライス時に導入された加工変質層を完全に除去するとともに4インチウエハの全面にわたってSi面に関してはSa 0.3 nmオーダ、C面に関してはSa 2 nmオーダを得ました。また、スライス面から仕上げまでに要した研磨時間はSi面は85分(第1ステップ25分、第2ステップ60分)、C面は45分(第1ステップ15分、第2ステップ30分)であり、SiCウエハを高能率に研磨仕上げすることに成功しました。
 以上の結果はPrecision Engineering誌に掲載されました。


Xu Yang, X. Yang, K. Aoki, K. Yamamura
Slurryless electrochemical mechanical polishing of 4-inch 4H–SiC (0001) and (000–1) surfaces