2026.05.22

当研究室の孫栄硯助教を第一著者とする論文が、CIRP Annals - Manufacturing Technology に掲載されました。

 本研究では、次世代パワー半導体材料として重要な 4H-SiC を対象に、スラリーを使用しない電気化学機械研磨(slurry-less ECMP)において発生する表面欠陥に着目しました。特に、加工後表面に現れる溝状スクラッチ(groove-type scratches) と 突起状トレース(ridge-type traces) について、それぞれの形態的特徴、形成メカニズム、および抑制方法を体系的に明らかにしました。
 SiCは高い硬度と化学的安定性を有するため、従来の機械研磨ではスクラッチや加工損傷が生じやすく、高品位かつ高効率な表面仕上げが困難です。本研究では、電気化学的な表面改質と固定砥粒による選択的除去を組み合わせたスラリーレスECMPプロセスにおいて、表面欠陥がどのような条件で発生し、どのように最終表面へ転写されるかを詳細に解析しました。
 その結果、溝状スクラッチと突起状トレースは同じ「スクラッチ」として一括りにされるものではなく、異なる形成過程に起因する特徴的な欠陥であることを示しました。さらに、それぞれの欠陥形成メカニズムに基づき、加工圧力、砥粒保持状態、電気化学的改質条件などを適切に制御することで、欠陥の発生を効果的に抑制できることを実証しました。
 本成果は、SiC基板の高品位・低損傷・スラリー不要研磨プロセスの実現に向けて、表面欠陥の発生原理に基づいた加工条件設計指針を与えるものです。また、環境負荷の高いスラリー廃液を伴わない次世代半導体基板加工技術として、持続可能な超精密加工プロセスの発展にも貢献することが期待されます。